Gotoda

大手出版社で7年間、図鑑や読み物、絵本など、幼児・児童向けの書籍を中心に企画・編集を行う。2015年7月エムスリー株式会社に入社。以来、一貫して製薬企業向けマーケティング支援におけるコンテンツプロデュースに従事し、2021年4月よりチームマネジメントも行う。2022年4月よりm3.comのサイトプロモーション及びコンシューマー向けサービス開発を兼務。

―後藤田さんは編集というバックグラウンドからの転身ですが、転職を考えられた背景と、なぜエムスリーを選ばれたのかを教えてください。

転職に踏み切った理由は2つあります。まず大きかったのが、紙媒体を中心とする出版業界は今後縮小することが予想されるため、Webコンテンツ制作の経験を積みたかったということ。もうひとつは、より成長できる環境に身を置きたいということでした。

Webコンテンツ制作でいえば選択肢はさまざま考えられましたが、自身が成長できる環境を考えると、大企業よりはベンチャー、メガベンチャーといった成長中の会社で事業の成長のさせ方やスピード感を経験すること、また、自分より優秀な人材がそろっていることが重要だと考えました。また、仕事を通じてよりよい社会をつくりたいと考えているため、社会貢献性が高いと考えている、教育や医療などの領域を志向しました。そうして出会ったのが、エムスリーでした。

―入社後にギャップやご苦労はありましたか?また、それをどう克服されてきましたか。

MRや薬剤師、獣医などの医療のバックグラウンドを持つメンバーに比べると、医療に関する知識が足りない面はあります。しかし、それは日常業務を通して勉強し、適宜まわりのメンバーに協力を仰ぐことで、比較的早期に対応することができました。むしろ私の場合B to Cの経験が長かったため、B to Bの仕事のやり方や、医療業界特有の文化に慣れる方が苦労しました。自分が最終決定者であった編集者のときと異なり、B to Bの場合はクライアントに納得いただくことが大事になってきます。そのため、提案の際はなぜその提案をするのか説明できるよう心がけています。

―たしかにエムスリーでは、物事を構造的に考えるロジカルシンキングが徹底されているイメージがありますね。エムスリーに入社して、良かったと思う点は何でしょうか。

データをもとにロジカルに考え、仮設をたてて検証するといったことは、前職のときから行っていました。しかし、編集者は個人で動くことが多く、我流であったため、論理の飛躍や抜け漏れも多かったと思います。エムスリーではファクトから結論まで体系立て論理を組み立て、議論します。コンサルティングファームやマーケティングで働いている方たちの中では当たり前のことかもしれませんが、私にとっては新鮮で、ロジカルシンキングが実践で役立つ形で身についたと思います。各プロジェクトを進める際に、他グループのメンバーと一緒に、どうすれば顧客価値を最大化できるか議論しますが、議論の過程やアウトプットとしての提案書が学びの材料となっています。

―入社されて5年ですが、仕事の内容は変わってきましたか?

m3.com内の「MR君」や「ワンポイント医療情報」といったサービスで配信する医療従事者向けコンテンツの企画・プロデュースが中心という点は変わっていません。しかし、お客様のニーズに応じて、それらだけでなく、より幅広い提案をできるようになったと思います。たとえば、クライアントから患者向けのオウンドメディアに掲載するコンテンツ制作の依頼があったときに、そのサイト自体のUI/UXなども考慮して、コンテンツ単体でなく、サイト全体の改善案や依頼された以外のコンテンツ案を提案したところ、そのサイトのリニューアルを任せていただいたことがありました。また、患者向けのメッセージ訴求がしたいというニーズを受け、グループ会社の患者向けメディアと合わせて、映画館でのプロモーションを提案して通ったこともあります。

―それは、後藤田さんの編集者としての経験が生きているようですね。

それはあると思います。製薬会社のクライアント対応は私たちコンテンツプロデューサーとSPBUで主に行っていますが、コンテンツプロデューサーは商談の場以外にも、撮影や収録など、クライアントと接する機会が多くあります。そうした際、ちょっとした雑談からニーズに気づけることがあります。そんな風に、常にアンテナを張っているのは、編集者ならではかもしれません。

キャリア採用が多く、自由度の高いエムスリーでは、各人がそのバックグラウンドを活かして、働けると考えています。

―ところで、後藤田さんは他部署と連携したAI関連のプロジェクトに参画されているそうですね。どのような活動なのですか?

エムスリーには「データ分析寺子屋」という制度があり、そこで、現在使われているコンテンツの評価指標を分析、検証したいと手を挙げたことにより、プロジェクトが始まりました。寺子屋とは、データサイエンティストから分析手法等についてアドバイスをもらいながら、プロジェクトを進める社内制度となります。

データ分析として行ったのは2つあります。弊社のMR君では、コンテンツ視聴医師に対し「このコンテンツは治療に影響がありましたか」という質問で、コンテンツを5段階評価していただいています。つけられたコンテンツ評価をどのように用いれば、処方に対するコンテンツの影響を予測できるかを検証するため、平均値、中央値、評価5の割合などさまざまな切り口で分析しました。
もう一つが、評価と関連する要素を分析し、今後のコンテンツプロデュースに活かすということです。要素としては、コンテンツの形式が動画か静止画か、出演者は誰か、テーマやコンテンツの長さ、含まれているキーワードは何かなどで、コンテンツ評価に影響を与えうるさまざまな条件を組み合わせて分析しています。

この作業を、人力で行い、1つの診療科の医師の傾向は把握することができました。しかし、コンテンツの評価に影響を与える要素は医師個人によって異なると考えられます。今後はAIを活用することで、m3.com上の各医師の行動履歴から、個々の医師のコンテンツ評価に影響を与える要素の予測を行いたいと考えています。

―コンテンツの効果測定がより適切に行え、今後の制作に反映することで、より高い価値提供につながりますね。

そうですね。Eコマースであればコンテンツと売上は直接結びつくので分析がしやすいと思います。一方薬剤の場合は、コンテンツを見て直接購入するものでないため、その分析が複雑になります。医師の役に立つコンテンツであっても、薬剤の処方には結びついていない可能性もあります。そのため、いくつかの指標を総合的に評価し、クライアントである製薬企業のニーズに沿ったコンテンツは何かという価値観を整理して考える必要があります。今は、そのステップが始まったところですね。

―そもそも、このデータ分析のプロジェクトには自身で手を挙げて入られたということですが、後藤田さんのように社歴が長くなくても、意欲があればこうした新規プロジェクトに参加することは可能ですか?

そうですね。エムスリーでは、手を挙げさえすれば、誰でもチャレンジできる会社です。そうした意欲や積極性のある方にはもってこいの環境だと思います。実際、私もB to Cのサービス開発に携わりたいという希望をかなえていただき、医師向けのサイト活性化やコンシューマー向けのサービス開発を行っている部署と兼務させていただいています。

―また、後藤田さんは採用活動のなかで、一次面接を担当されているそうですね。面接では、候補者のどのようなところを見ているのですか。

成功体験を伺いますが、成果の大きさより、そこにいたったプロセスを重視しています。結果にいたるまでの各意思決定の理由を伺うことにより、成功がたまたまなのか、再現性があるのかを知りたいと考えています。なぜ成功/失敗したのかまで分析し、次にどのように生かすかまで明確に考えられているような方とは、ぜひ一緒に働けたらと思います。

ただ、研究開発などを行ってらっしゃる方だと、ひとつのプロジェクトの期間が長かったり、大きな仕事の中の一部をまかされたりと、キャリアの早い段階ではまだ意思決定や試行錯誤の経験が少なく、仕事の成果だけではポテンシャルを判断するのが難しい場合もあります。その場合には、コンテンツプロデューサーの仕事でよく遭遇する課題を単純化して伝え、どのように考えるか伺っています。その思考プロセスから、データを読めるか、論理的に考えられるかなどを見させていただいています。