Iketani
慶応義塾大学薬学部を卒業後、米系投資銀行の日本支社に入社。調査部の証券アナリストとして機関投資家に企業および業界情報を発信。担当セクターは、1年目に医薬品・ヘルスケア、2年目以降に小売りを主として、そのほかトイレタリー、素材、食品、サービス等を経験。2017年11月エムスリー株式会社に入社。現在に至る。―薬学部のご出身ですね。
中高生の頃から、医療に関わる仕事への興味を強く持っていました。一般的には、医師を志して目の前の患者さんの治療に貢献する選択肢もあるかと思いますが、創薬であれば世界の裏側の患者さんへも貢献することができるかもしれません。その可能性が魅力で、薬学部に進み、研究に没頭しました。ただ、大学に入学してから、実際に一つの新薬が世に出せるまで10年から20年はかかるという事実を知り、自分の職業人生において、幸運だったとしても生み出せる薬は1つか2つであるという現実に向き合った結果、5年生の頃に方向転換することにしたのです。また、大学では研究以外にも、病院でのアルバイトや薬剤師実務実習を通して、医療現場と深く関わる機会がありました。その中で、非効率な部分がとても多いと感じるようになりました。医療に関わる方たちは患者さんに貢献したいという深いモチベーションで業界に飛び込まれているはずなのに、現場ではそういった方たちのポテンシャルを最大限に活かし切れていない場面を目にしました。そうした状況が変わるには、病院や薬局など内部からではなく、外部の力も必要だと、学生の頃の経験を通じて思ったのです。
それで、あえて医療・製薬業界からは距離を置いて、外部の視点から客観的に業界を分析し、提言することのできる、証券アナリストという職業をめざしました。
―証券アナリストの仕事は、期待どおりでしたか?

ただ、ジュニアアナリストはまだまだ下積みで、調査レポート上は連名であっても、責任をもつのはメインのシニアアナリストの役目です。自立して自身の名前で業界全体に提言するには、最低でも10年はかかる世界でした。新卒4年目に、このままアナリストを続けるべきか考えるきっかけがあったのですが、証券会社に就職した目的でもある、医療以外の世界との関わりと、業界にインパクトを与えるような発信という目標はある程度達成できた思いもあり、別のフィールドへの転職に踏み切ったのです。
―それでエムスリーに転職されたわけですね。

―今の仕事内容について教えてください。

ソリューションパートナーとしてソリューションパートナービジネスユニット(SPBU)に所属し、m3.comを基盤とした製薬企業向けマーケティング支援の業務を行っています。また、それだけではなく薬剤師向けのサービス、またエムスリーのIR業務も担当しています。
前職で経験はあるものの、新卒3-4年程度の経験で、エムスリーのような1兆円規模の企業のIR業務は、普通は担当させてもらえないもの。それを任せてくれるところに、組織の器の大きさを感じます。
―薬剤師向けのサービス担当というのも、薬剤師資格保有者である池谷さんならでは、でしょうか。

―前職からの違いというのは、どういう点で感じますか?
まず、事業会社の特性かもしれませんが、チームで働くということです。金融業界では業務が綺麗に分担されているので、私であればアナリスト業務に専念していました。SPBUでは、担当クライアントの案件獲得から納品に至るまで一貫して関わり、各事業担当者との打ち合わせや会議も密に行って、チームごとに役割を変えながら、クライアントにコミットしています。また、社内外問わず、相手のミッションや状況を考え、どうすれば響くのかをものすごく真剣に考えるようになりました。証券アナリストでいえば、クライアントである投資家のニーズは偏差が小さく、情報を提供することがメインの仕事でした。しかし今はクライアントごとにその企業文化であったり、マーケティングにおけるデジタルの位置づけなど、企業ごとのニーズの多様さを感じます。
また、同じ製薬企業であっても、製品担当者によって考え方は異なりますし、扱う製品のライフサイクルによっても求められるものは様々です。それに対して提案するサービスも、世の中にまだなく、私たちが創っていくものもあるので、今あるルールを時には変化させながら、クライアントがやりたいことや私たちがやるべきことを進めていくわけです。それが上手く合致したときは、やりがいや手応えも十二分に感じますし、自身の成長にもつながっていると思います。
―今後の目標は?

もう一つ、身近な目標としては、クライアントの業績において圧倒的な貢献をすることです。クライアントの主力製品でエムスリーのサービスが適切に活用されることで、当該製品の情報がタイムリー且つ効率的に伝わり、たとえばIR資料に 「 デジタル活用施策により計画を上回るスピードで広範囲な医療従事者に適正な情報提供が行われ、結果的に想定を上回るスピードで売上拡大」 などの文言が明記される、それ以外に説明しようがない程の結果を出す、ということです。
―最後にメッセージをお願いします。
